Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

東京日記 あじさい電車

箱根登山鉄道の「あじさい電車」に乗った。
箱根登山鉄道の沿線には、約1万株の紫陽花が植えられているという。毎年、6月下旬~7月上旬の見ごろのころは、通常運行の電車を「箱根あじさい電車」と名付けて、多くの行楽客を呼び込んでいる。


最大1000分の80勾配(1m走る間に、80mmの高さを登る勾配)の急勾配を登るため、箱根湯本~強羅間を40分で結ぶ途中、3ヵ所のスイッチバックがある。速度を落としてゆっくり登るので、車窓すれすれに咲き誇る紫陽花が眼前を流れていく。


宮ノ下駅に停車中の旧型車両「モハ2形」。


塔ノ沢駅で降りて、参道の急な石段を汗をかきながら登り、箱根のあじさい寺とも呼ばれる阿弥陀寺にも立ち寄ってみた。


阿弥陀寺参道のヤマアジサイ。


実は箱根登山鉄道に乗ったのは今回が初めて。前から一度乗ってみたかった登山電車と3番目に好きな花―紫陽花とのコラボレイトはなかなかいい感じ。少々電車オタク(鉄オタではない)の傾向があるので、こんな小旅行は文句なしに楽しい。

蛇に会う

このところ、行く先々で蛇によく出会う。
以前はそうでもなかったのだが、歳をとるにつれて蛇がニガ手になってきた。不思議なもので会うと嫌だなと思うようになってから、かえって遭遇率が高くなったような気がする。これは《会いたくない人に限って目の前に現れる法則》(と私が勝手に命名)と同じ現象であろうか。


今月初めに山形県高畠町にある安久津八幡神社を参拝した時、奥殿に通じる山道で出会ったシマヘビ。道を塞いでなかなか動こうとしない。驚いたのはその大きさ(太さ)で、シマヘビにしては珍しく1.5m以上あったのではないか。シマヘビは無毒で臆病な蛇だが、さすがにこの上をまたいで行く気はおこらず、草叢に消えるのをしばし待った。


先月中旬、秋田県八峰町(旧峰浜村)目名潟にある日上神社でのこと。社殿の戸を開けたらお賽銭箱の前で何やら動く物体が、と思ったら蛇だった。一瞬ドキリとしながらも、デジカメで撮影した写真をあとで見たら色が黒い。ストロボをたかなかったので、暗くてはっきりしないが、どうも俗にカラスヘビといわれている黒化タイプのシマヘビのようだ。

神社のほかに私が蛇によく出会うのは温泉だ。今月初めの安久津神社のあとに訪れた山形県の赤倉温泉では、朝方、泊まった宿の近所を散歩していたらまたしても道にシマヘビが横たわり通せんぼしていたし、昨年は福島県の微温湯温泉で宿の中庭でアオダイショウとご対面、しばらくにらめっこしてしまった。蛇は変温動物だが、温泉のような暖かい場所を好むようだ。
一番印象に残っているのは、昨年夏に泊まった青森県八甲田の酸ヶ湯温泉。なんと湯治客が行き交う自炊棟の軒下で2匹のヤマカガシがとぐろを巻いていた。ヤマカガシは以前は無毒とされていたが、近年になって毒を持つことがわかり、毒蛇の仲間入りをした。そう思って見ると、確かにシマヘビやアオダイショウと違って毒蛇らしい体型と色彩をしている。


神社や温泉で蛇に出会うと、なんとなく蛇に対する畏怖というか、そこの守り神のように見立ててしまう感情が起こるのは、この生物の持つ神秘性や生命力、そこから生まれる様々な象徴性といったものにも関係するのだろう。
古い時代から蛇は神の象徴、あるいは使者とされてきた。秋田では八郎太郎でなじみの深い龍神信仰も蛇神の変形ともいえ、信仰する側に厳密な区別はないように思える。蛇に会うとお金持ちになれるとか、ヘビの抜け殻を財布に入れるとお金が入るという俗信もある。
でも、やっぱり、なるべくなら出会いたくないなあ。
私の場合、神社が好きで(それも奥深い山中にあるようなマイナー神社)、低山徘徊、温泉訪問が仕事みたいなものだから、まあ、しかたない気もするけれど。


ここで、なんで蛇が若いころよりニガ手になってきたのか、考えてみた。蛇と同じく歳をとるにつれてニガ手度が増してきたものに、高い所がある。蛇嫌いと高所恐怖症、もしかすると、これは単に歳をとってヘタレ度が高くなっただけのことなのかな。

上山の「アトリエ・コロボックルの森」

仙台から蔵王経由で山形県の上山(かみのやま)に立ち寄った。
上山は市内に6軒もの共同浴場がある湯の町で、昨年の今ごろも温泉取材で訪れ2泊している。今回寄ったのは温泉がらみではなく、「アトリエ・コロボックルの森」という工房(茶処)に行きたかったから。


民家を改装した工房内にはオーナーの猪股美喜子さんが創作した球体関節人形が展示されており、ここで創作人形教室も開いている。昨年、上山の町を探索していた時に新湯地区で偶然見つけたのだが、まさか上山に球体関節人形の工房があるとは思わなかったので驚いた。その時にちょうど居合わせた猪股さんが、私にここで工房を開いた経緯などをいろいろお話してくださり、実際に人形のパーツを用いて人形制作の手順についても説明してくださった。

 球体関節人形といえば最近(でもないか)では押井守の失敗作?『イノセンス』かな。作家としてはハンス・ベルメール、日本では四谷シモンといった名前を思い浮かべてしまうが、私にとって特別な関心の対象というわけでもない。が、実際にバラバラになった人形のパーツを目にすると、なんともいえない生々しさというか、艶めかしさがあって、少々たじろいだ。その時にパーツの写真も撮らせていただいたのだが、ここに掲載するには不都合な感じがするので、制作手順を解説した猪股さん(球体関節人形の作家名は蕗 童子)のブログを参照されたい。


 これはアイヌに伝わる「コロボックル伝説」を基にした創作人形。『コロボックル こどものすきなかみさま』というタイトルで人形絵本にもなっている。今は「天童オルゴール博物館」で行われている人形展に出張展示中(6月21日まで)なので工房では見られない。この写真は昨年撮影したもの。


山形の古布を使った衣服や小物類を販売している店の奥に喫茶スペースがある。今回は猪股さんは不在だったのが残念だったが、人形を眺めながらここでしばしくつろいだ。


※「アトリエ・コロボックルの森」
http://www.yway.jp/way/machi-neta/mn.html?id=760

菅江真澄in仙台

3日前から仙台に来ている。昨年の1回目に続き2回目となる「菅江真澄の足跡・写真コンテスト」入賞作品展の会場係員として。昨年の開催はようやく桜が咲き始めるころだったが、今年は5月末。街はもう初夏の装いで、ケヤキをはじめとする街路樹の緑が目にまぶしい。


考えてみれば、昨年の12月にも訪れて、ケヤキ並木を数十万個のイルミネーションで彩る「SENDAI光のページェント」を見ている。結構、この街が好きなのかも。これで女性がもう少し○○○だったらね。仙台の街を高校生も含めて秋田の女性が歩いていたらいいのになあ。おっと、これはあくまでtoshibonの偏見というか、個人的な見解であることをお断りしておきます。


 
「写真コンテスト」作品展は30日(土)までの開催。会場は東北電力グリーンプラザ(電力ビル)で、ここは人通りの多い繁華街のど真ん中にあるため、集客力は抜群。入場者は毎日500人以上を数える(写真コンテスト以外にも複数の展示イベントなどが行われている)。ただし、仙台では菅江真澄の知名度は本当に低い。真澄は仙台まで来ているのだが、肝心の著作が残っていないので、郷土を記録した身近な人物とはなり得ず、一般にはほとんど認知されていないのが現状だ。
書名だけが知られる未発見本―「月の松島」「雪の松島」「花の松島」のいわゆる“雪月花の松島三部作”―が発見されたら世紀の大ニュース! 一気にメジャーになるんだろうけど…、これはユメですね。


ホテルの部屋から東北楽天ゴールデンイーグルスのホーム球場となっている「クリネックススタジアム宮城」が見える。このあたり一帯は菅江真澄も訪れた歌枕の地、宮城野で、かつて(1970年代)ロッテが仙台を準フランチャイズにしていたころの球場名も宮城野球場だったはず。右に見えるこんもりとした緑の森は、国分寺としてはもっとも北方にあったという陸奥国分寺跡。


陸奥国分寺跡にある薬師堂(国指定重要文化財)。大昔、私の友人が同人誌にこの薬師堂の近くに住んでいたこと書いていた。今、その同人誌が手元にないのでうろ覚えなのだが、確か当時大流星雨の出現が予想されたジャコビニ流星群にからめてのエッセイだったと思う(ユーミンも歌にしている)。もう35年も前に読んだ文章なのに、なぜ今ごろ思い出したんだろう。薬師堂の狛犬。記憶とは不思議なもので、初めて訪ねたのに、なぜか薬師堂周辺が懐かしい場所のように思えてならなかった。


これは狛犬ならぬ、三瀧山不動院に安置されている「仙台四郎」像。電力ビルのすぐ近くのクリスロード商店街の中にあるので、お昼休みにお参りしてきた。仙台四郎は江戸時代末から明治にかけて仙台に実在した人物。彼が立ち寄る店は必ず商売繁盛したことから福の神と呼ばれるようになった。


現在では仙台以外の宮城県各地、県外まで仙台四郎信仰?が広まり、秋田市の飲食店でも仙台四郎グッズを見たことがある。この写真(赤矢印)は鳴子温泉の滝の湯共同浴場近くにある居酒屋「なんでもや」に飾ってあったもの。


仙台に来ると吸い寄せられるように勾当台公園に立ち寄ってしまう。若いころの体験がトラウマになっているのかな(その理由はこちら)。これは公園内に立つ男女の彫像「季の杜に」(一色邦彦作) 。


男性の彫像の背後にまわると形のよいお尻が! さすがtoshibonゆかりの勾当台公園だけのことはある?! 作者の方、下ネタに使ってすみません!


夜、飯を食べようとホテルの近くをうろついていたら、店名がコクトー(cocteau)というよさげな店を発見。板張りの階段をのぼった2階に、テーブル席だけのなんとも落ち着ける空間があった。飲むつもりはなかったがつい白ワインを注文。


置いてある本の背表紙を見たら、村上春樹の『辺境・近境』が。これは村上氏には珍しい紀行文集で、私には(生意気にも)あまりいい出来とは思えなかったのだが、この本を私にプレゼントしてくれたのが、かつて薬師堂の近くに住んでいた友人であった。


そういえば、村上氏のやっていたジャズ喫茶の名が「ピーター(キャット)」で、仙台国分町にある老舗ロック喫茶が「ピーター(パン)」で、その「ピーターパン」にくだんの友人と行ったことがあって…。ああ、歳をとると、記憶というのは際限がなくなるものなのか…。

「ブラピ」を知らない妻

先日、妻と連れだって街まで出て映画を観た。妻と一緒に映画を観るのは宮崎駿の『千と千尋の神隠し』以来だから本当に久しぶりだ。映画のタイトルは『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(デビッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演)。D・フィンチャーの監督作品にしては意外やマトモというか、わかりやすい感動作になっていて、そのぶん私にはちょっと物足りなさが残った。よくできた映画ではあるのだけれど…。


映画を観たあと仕事を終えたばかりの妻の友人を誘い、3人で駅前で飲もうということになったのだけど、さてどこに行ったらいいものやら逡巡することしばし。引きこもり気味のひやみこぎしている間に、駅前は派手なディスプレイが目を引くFC(フランチャイズ・チェーン)系居酒屋が進出して随分様変わりしてしまった。私は基本的にひとりで飲むことが多いので、こうした居酒屋に入ることは滅多にない。が、今回は心強い?連れもいることだし後学のために、ということで、「A・N」という酒場に入ってみた。ここはこの街を本拠に全国チェーンの居酒屋を展開している会社の直営店で、実はこの会社の店舗を利用するのは初めて。その感想としては…ウーン、やっぱりニガ手な部類かな。接客にしろ、メニューにしろ、店内装飾にしろ、演出が過剰で落ち着けない。酒を飲んだり肴を食べたりする以外の余計なものがありすぎるのだ。でも、こうした酒食以外のサービス過剰なところが、かえって他県から訪れた商用客、観光客には喜ばれるのかもしれない。


「A・N」を出たあと(口直しで)もう一軒行こう、と女性陣の提案。で、向かったところがもつ焼き屋の「K」とは、随分落差ありすぎの選択(笑)。時間はもう9時を過ぎているのに、店内は仕事帰りのサラリーマンと思しき呑兵衛オヤジたちで満杯で、女性客もチラホラみえる。妻は「これが本場の酒好きの姿だねェ」「酒飲み県はやっぱりこうでなくちゃ」といたく感激した様子。それにしても、妻も妻の友人もオヤジに混じってコップ酒を飲む姿に違和感がないというか、馴染んでいるというか…。


この店に入ったのは何年ぶりだろう。もしかして20年ぶり? それにしても店の雰囲気は当時と全く変わってないな。などと考えていたら、妻が「K」へは私に連れられて初めて入ったと言うではないか。もしかすると結婚前に妻と一緒に来たのが最後だったのか? そんなことはすっかり忘れている自分の記憶喪失ぶりに自分で驚いたのだが、もっとびっくりしたのは、 ここでさきほど観た映画の話をしていて、妻がブラッド・ピットを知らないのがわかったこと! 前々からちょっとオヤジ度が高い女性であることは感じていたが、今どき、ブラピぐらいはオヤジでも知っているんじゃぁ。とはいっても、森高千里と松浦亜弥が好きだと公言してはばからないミーハー軟弱男の夫(toshibon)とブラピを知らない「漢」の妻。こんな凸凹コンビのほうが案外うまくやっていけるのかも!?
 
燗酒をつけるアルミの「タンポ」、受け皿付きのコップ、そして豆腐入りもつ煮込み。これぞ正しい大衆居酒屋の3大アイテム。