Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

蛇に会う

このところ、行く先々で蛇によく出会う。
以前はそうでもなかったのだが、歳をとるにつれて蛇がニガ手になってきた。不思議なもので会うと嫌だなと思うようになってから、かえって遭遇率が高くなったような気がする。これは《会いたくない人に限って目の前に現れる法則》(と私が勝手に命名)と同じ現象であろうか。


今月初めに山形県高畠町にある安久津八幡神社を参拝した時、奥殿に通じる山道で出会ったシマヘビ。道を塞いでなかなか動こうとしない。驚いたのはその大きさ(太さ)で、シマヘビにしては珍しく1.5m以上あったのではないか。シマヘビは無毒で臆病な蛇だが、さすがにこの上をまたいで行く気はおこらず、草叢に消えるのをしばし待った。


先月中旬、秋田県八峰町(旧峰浜村)目名潟にある日上神社でのこと。社殿の戸を開けたらお賽銭箱の前で何やら動く物体が、と思ったら蛇だった。一瞬ドキリとしながらも、デジカメで撮影した写真をあとで見たら色が黒い。ストロボをたかなかったので、暗くてはっきりしないが、どうも俗にカラスヘビといわれている黒化タイプのシマヘビのようだ。

神社のほかに私が蛇によく出会うのは温泉だ。今月初めの安久津神社のあとに訪れた山形県の赤倉温泉では、朝方、泊まった宿の近所を散歩していたらまたしても道にシマヘビが横たわり通せんぼしていたし、昨年は福島県の微温湯温泉で宿の中庭でアオダイショウとご対面、しばらくにらめっこしてしまった。蛇は変温動物だが、温泉のような暖かい場所を好むようだ。
一番印象に残っているのは、昨年夏に泊まった青森県八甲田の酸ヶ湯温泉。なんと湯治客が行き交う自炊棟の軒下で2匹のヤマカガシがとぐろを巻いていた。ヤマカガシは以前は無毒とされていたが、近年になって毒を持つことがわかり、毒蛇の仲間入りをした。そう思って見ると、確かにシマヘビやアオダイショウと違って毒蛇らしい体型と色彩をしている。


神社や温泉で蛇に出会うと、なんとなく蛇に対する畏怖というか、そこの守り神のように見立ててしまう感情が起こるのは、この生物の持つ神秘性や生命力、そこから生まれる様々な象徴性といったものにも関係するのだろう。
古い時代から蛇は神の象徴、あるいは使者とされてきた。秋田では八郎太郎でなじみの深い龍神信仰も蛇神の変形ともいえ、信仰する側に厳密な区別はないように思える。蛇に会うとお金持ちになれるとか、ヘビの抜け殻を財布に入れるとお金が入るという俗信もある。
でも、やっぱり、なるべくなら出会いたくないなあ。
私の場合、神社が好きで(それも奥深い山中にあるようなマイナー神社)、低山徘徊、温泉訪問が仕事みたいなものだから、まあ、しかたない気もするけれど。


ここで、なんで蛇が若いころよりニガ手になってきたのか、考えてみた。蛇と同じく歳をとるにつれてニガ手度が増してきたものに、高い所がある。蛇嫌いと高所恐怖症、もしかすると、これは単に歳をとってヘタレ度が高くなっただけのことなのかな。