普通、おばちゃんがやっている酒場といえば客層の年齢が高いのが普通だが、「天国」は20代の若い連中が多かった(私が初めて行ったころは、高知弁でいう「おんちゃん」がやってくる大衆酒場だったのだが、いつの間にか客層が変化した)。高知にいたころの私は今より酒が強く(おまけに人恋しさも強く)夜な夜な街に繰り出して、酒場を2~3軒ハシゴして帰るのが日課だった。行くところはだいたい決まっていたが、中でも一番よく通ったのが「天国」だった。行くと必ず会えたOさんのような(時々お酒を御馳走してくれる)同年代の仲間がいたし、何よりおばちゃんの人柄がよくてコの字型のカウンターに座ると心安らぐことができたから。『天国の日々(Days of Heaven)』(テレンス・マリック監督/1978)という名作映画があったけど、今思い返してみると、高知での日々を形容するのにこのタイトルがまさにぴったりだ。