Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

台湾の温泉①

先月、山形県内陸部の湯めぐりに出かけ、遅ればせながら蔵王温泉の大露天風呂に初めて入った。渓流に沿って階段状に連なる湯舟を見たとき、どっかで見たことのある造りだなあ、と思ったのだが、しばらしくしてそれは2年前に旅行で訪れた台湾の北投(ペイトウ)温泉の露天風呂だと気が付いた。


台北の中心部から都市交通システムMRT(Mass Rapid Transit System)の電車で30分ほどの郊外に北投(新北投)温泉はある。台湾は環太平洋火山帯に属し、活火山こそないが火山脈が島の中央を通っているので、日本に負けず劣らずの温泉国。その数100カ所以上ともいわれる。ただし、台湾で本格的に温泉が開発されたのは日本統治時代になってからで、北投温泉も日本人が住み着き、温泉を開発したことから、町はどことなくひと昔前の日本の温泉街に感じが似ている。


北投親水温泉公園にある「露天温泉浴地(露天風呂)」は、政府(観光局)が温泉を広めようと作った日本でいうところの公共の温泉で、そのせいか料金も平日は20元という安さ(1元=約3円)。
蔵王温泉の大露天風呂に似ているのはその造りで、脱衣場から木造階段を下りたところに数カ所の湯船がある。上から順にぬるくなり、塀があっても外から丸見えなところも、蔵王スタイル(蔵王で男湯が通路から丸見えなのは、女性に対する一種のセクシャルハラスメントでは?)。ただし、こちらは混浴だが全員水着着用が義務付けられているので、心配はご無用。


泉質は透明な酸性の硫黄泉で、その点でも蔵王温泉に似ているが、ラジウムの含有量が多く硫黄分はあまり感得されないので、どちらかというと秋田県の玉川温泉に近いかも。北投温泉を有名にしているのがこの温泉で産出したことから名がついた北投石の存在だから、その意味でも玉川温泉と共通点があるのかもしれない。(放射能を有する北投石は世界で北投温泉、玉川温泉、チリの3カ所でしか産出されないらしい。玉川のものは特別天然記念物なので採取は厳禁なのだが、盗掘されたり、展示保管しているものが盗まれたりして、しばしば新聞をにぎわす)


露天風呂と川をはさんだ向かいには公衆浴場「瀧乃湯」がある。こちらは日本の銭湯と変わらない造り、というより津軽あたりにありそうなマニア度の高い共同浴場といった趣で、ここは水着なしでOK。昭和天皇が皇太子のころに訪れたという歴史を持ち、台湾に現存する最古の浴場という。(toshibon的には、露天風呂よりもこちらを推薦?)


最近まで温泉の資源活用にあまり熱心でなかった台湾だが、1999年に「台湾温泉観光年」として、温泉資源の見直しに官民あげて乗り出し、新たに温泉地の開発が進められた。そうしたこともあって、各地に北投(新北投)温泉の「露天温泉浴地」をはじめとする公共の入浴施設が出現し、それまで「他人に肌を見せたくない」という観念が強かったため、ほとんどなかった露天風呂も設けられるようになり(ただし水着着用)、温泉ブームが到来しているようだ。
それを裏付けるように、たまたま立ち寄った台北の本屋の旅行ガイドコーナーには、温泉のガイドブックが花ざかりで、ズバリ「秘湯!」というタイトルの本もあったほど(秘湯ということばは、もちろん日本からの輸入)。表紙も内容も日本の温泉ガイドとそっくりなのがおかしかった。
(この項続く) 


・台湾の温泉本
http://home.att.ne.jp/omega/onsen/beyond-the-sea/taiwan/book.html
・世界屈指の名湯北投温泉
http://www2.tba.t-com.ne.jp/dappan/fujiwara/article/onsen.htm