Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

早戸温泉つるの湯

一カ月ほど前、なにげにTVをつけたら、ちょうどNHKで「ふだん着の温泉」をやっていた。この番組は放送日時がわかりにくい(チェックしていない)ので、ほとんど見ることがないのだが、取り上げていたのが福島県三島町の早戸温泉だったので、引き込まれるように見てしまった。


早戸温泉は只見川沿いの宮下ダムの人造湖のほとりにある温泉で、「竹の屋旅館」と「つるの湯」という2軒の宿があるが、紹介していたのは「つるの湯」のほうだった。実のところ私は東北6県の中では福島県の温泉が一番好きで、中でも奥会津の温泉にわけもなく惹かれる。只見川流域沿いの金山町の湯倉、大塩、八町、玉梨などの共同浴場、それに西山温泉(柳津町)、早戸温泉などの湯治場は、私がホームグラウンドとしている秋田県八幡平や西栗駒山麓などの泥臭い温泉にはない独特の鄙びの魅力がある。


TVを見ていてすぐに気がついたのだが、「つるの湯」は日帰り入浴施設を併設した温泉にリニューアルされたようで、以前の宿と大きく経営形態が様変わりし、湯治棟だった旧館と旧浴場がなくなり、かつての旅館部が宿泊棟(湯治棟)になっていた。


つるの湯のかつての旧浴場は、湯治棟から階段を下りて行ったダム湖の岸にあって、混浴の2つに仕切られたコンクリートの湯舟に、淡褐色の食塩泉があふれていた。浴場の造りもお湯の泉質も、これぞ正しい「東北の湯治場」といった趣のある私好みのお風呂だった。
浴場の大きな窓を開けると、すぐ下がダム湖で、マンガ家のつげ義春だったろうか、風呂に入りながら釣りができるなどと紀行文に書いていたように思う。
旧浴場がなくなったのは残念だが、TVを見た限りでは自炊の湯治宿としての形態は以前と変わらないようなのでひと安心。もともと早戸温泉は三島町(旧早戸村)が温泉の権利を所有しており、リニューアル後は第三セクターによる経営に移行したようで、むしろ前より湯治宿としては一般の人が利用しやすくなったかもしれない。


早戸温泉を最後に訪れたのは4年も前になるだろうか。三島町は桐の産地として有名なところだが、ちょうど桐の花が咲く季節で、只見川に沿って車を走らせながら、まるで桃源郷を旅しているような心地がしたものだ。来年あたりはまた、のんびりと会津の湯めぐりをしたいものだなあ……