Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

気まぐれに1冊⑧ 『すゞしろ日記』

この間、たまたま点けていたTV(NHKの大河ドラマのタイトルバック)に山口晃さんの絵が出てきた。それで久しぶりに『すゞしろ日記(弐)』を手にとってみた。藝大出身の人気画家(以下、親しみをこめて画伯)のエッセイ漫画=絵と吹き出しによるエッセイ集=とでもいうべきもので、これまで3冊出ている。私が持っているのはそのうちの2巻目で、1巻目(壱)は図書館から借りて読んだが、3巻目(参)は読んでいない。


画伯は1969年生まれというから、今年で50歳だけど、これを描いていたのは30代後半のころ。初めて読んだ時は、それにしては随分年寄り臭いなあ、スッキリした風貌や緻密でシニカルな画風から想像していたのとは違って渋くて可愛い!? というのが読後の感想だった。


画家は在宅仕事が基本の居職。自ら「絵を描く事が不自由」という遅筆で知られる画伯の創作の日々、その合間の日常が綴られる。蘊蓄や諦観、細かいこだわりと奥さんとのやりとり。なかでもこの日記でひときわキャラが立っているのが奥さん。『すゞしろ日記』は実は『愛妻日記』ではないかと思うほどに、奥さんとのエピソードが多くを占める。


B型の奥さん、O型の画伯。なかなかお似合いというか、仲が良い。ちなみに私の妻はO型、私はB型。山口家とは反対だけど、O型とB型の夫婦は相性がいいんです。なので共感するところ、笑えるところが多々あり。たとえば、看板(パッケージ)と中身の乖離(カイリ)についてのあれこれを述べた回でのやりとり―奥さん「あたしの一番の看板の違いはアンタだね。物静かで大人な人かと思ったけど…」 画伯「フンフン 思ったけど?」     奥さん「うるさくてガキ」―


正直に言うと、現代美術家としての山口画伯の絵はそれほど好きではない(「あんた何様?」的な物言いでスミマセン)。ただ、池上遼一を敬愛するという画伯の漫画家との親和性には引き付けられる。私の敬愛してやまない大友克洋、山岸凉子、江口寿史、諸星大二郎…これら漫画家と画伯のような画家との違いは何だろうか?  


すゞしろ日記 弐
すゞしろ日記 弐
羽鳥書店