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髪結いの亭主 物書きの妻

フォーレの「レクイエム」を聴く

アトリオン音楽ホールでフォーレの「レクイエム」を聴いた。アトリオン室内オーケストラの27回目の定期公演で、長谷川留美子(ソプラノ)藤野祐一(バリトン)という秋田にゆかりのある独唱者を迎え、合唱は地元秋田の女声合唱団コール・カペラ、秋田男声合唱団、秋田大学音楽科の学生という組み合わせ。アトリオン室内オーケストラは秋田県内の企業・団体・個人の支援によって支えられている小編成のオーケストラで、合唱もすべて秋田の方たち。いわば県民オーケストラ、市民合唱団による演奏会といっていい。それがこれまでアトリオン音楽ホールで聴いたコンサートの中でも一番と思えるほどの、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。


このホールは残響の豊かさに特徴があり、それが時に過剰とも思えるほど響いて耳にさわることがあるが、その豊かさが今回はプラスに働いていたように思う。宝の持ち腐れかと思っていたパイプオルガンもうまくアンサンブルに溶け込んでいた。オーケストラ、合唱団の練習の成果が結実したのは言うまでもないことだが、フォーレのレクイエムという楽曲のよさに負うところが大きいとも感じた。これまで長い間レコード、CDで親しんできたこの曲を生で聴くのは初めてだったが、やっぱり掛け値なしの名曲だ。


この曲は初演当時、「死の恐ろしさが表現されていない」「異教徒的」などの批判があったらしい。これに対してフォーレは「私のレクイエムは……死に対する恐怖感を表現していないと言われており、なかにはこの曲を死の子守歌と呼んだ人もいます。しかし、私には死はそのように感じられるのであり、それは苦しみというより、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた解放感に他なりません」と手紙に書いているという。
奇しくも19日は私の母の月命日。この季節に聴くにはぴったりの音楽でもあったのだろう。秋田で生まれた合奏団、合唱団によるこうしたレベルの演奏が、こうした音楽ホールで聴けるなんて、秋田もまんざら捨てたもんじゃないのかも。