Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

年の初めに盛岡へ

この年末年始、宮城県鳴子温泉で過ごしてから久しぶりに盛岡を訪れ、新しい年を迎えた街を歩いた。


盛岡八幡宮
ここへお詣りするのは、今から20数年前の初夏、「チャグチャク馬コ」を見たとき以来だ。正月も3日だというのに広い境内は初詣の人であふれ、拝殿が遠い。並ぶのが嫌な性分なので、大通りまで歩いて本屋(さわや書店)で時間をつぶし、そば屋でお銚子2本でいい気持になって、日が暮れてから再度詣でた。夜になっても人波が途切れないのは、さすが盛岡の総鎮守。初詣も含めて北東北3県の中では年間参拝者の数がもっとも多い神社ではなかろうか。


鉈屋町界隈
盛岡市街地を東から西に流れる中津川をはさんで南東側(河南)の紺屋町、八幡町、鉈屋町界隈は、岩手銀行の赤レンガ、肴町のアーケード、そして盛岡八幡宮、大慈寺などの寺社が建ち並ぶ。藩政期から明治~昭和へと続く古い町並が残るこのあたりをぶらぶらするのが好きだ。
今回数年ぶりに歩いてみたら、ところどころで様変わりしていた。「盛岡バスセンター」の建物がなくなり、喫茶店「六分儀」、居酒屋「とらや」が閉店したのは寂しいが、鉈屋町に「もりおか町屋物語館」という新しい施設ができていた。十六羅漢公園から清龍清水、大慈清水をめぐり、江戸時代には奥州街道の舟橋が架けられていた北上川の岸辺におりてみる。



訃報
いつもの紺屋町の喫茶店「クラムボン」へ。扉に貼り紙が。店主の高橋正明さんが元日の1月1日に亡くなったと書いてある。にわかに信じられず、しばし呆然。
最初の店、岩手大学の近くの上田にあった「セロ弾きの小屋」へは、70年代の終わりだったか、1度だけ行ったことがある。そこからほど近い場所に「クラムボン」と名を変えて移転した80年代には、何度か足を運んだ。そのころは玄米を用いた食べ物も提供していた。紺屋町に移ってからも盛岡へ行くと必ず立ち寄った。高橋さんに私の著書(2冊の温泉本)を進呈したこともあって、いつも「温泉の取材?」と声をかけてくれたのがうれしかった。貼り紙には、10日から営業を再開するとあった。店はこのまま娘さんが存続させるようだ。それが救いだ。ただただ、ご冥福を祈るのみ。




ますむらひろし展
年の初めの盛岡へやってきたのは、岩手県立美術館で1月3日から「ますむらひろし展―アタゴオルと北斎と賢治と―」が開催されるのを知ったからだ。
チラシには「本展では〈アタゴオル × 北斎シリーズ〉を中心に、宮沢賢治童話のシリーズなどますむらの緻密で独創的な作品世界を紹介。そのほか、マンガ原稿や創作ノート、作中の小道具の参考資料として使われた作家所蔵の鉱物や古道具などもあわせ、約200点が並ぶ」とあったが、200点どころか300点以上あると思われる展示物のボリューム感に圧倒される。1点、1点じっくり見ていると時間がどんどん過ぎて行く。どうしても好きなのは70年代の初期の作品かな。「霧にむせぶ夜」が懐かしい。
これだけ充実した内容で観覧料1000円(前売800円)は安すぎないか?!



近年の「アタゴオル×北斎」シリーズは初めてじっくり見たが、ちょっと微妙…
もともと『王様手帖』というパチンコの情報誌の表紙に描いたもので、これって、前回にこのブログに書いた大瀧詠一の曲作りにも相通ずるクリエイターの創作時の苦悶、締め切り間際のギリギリの格闘の中で一種の逃避から生れたような気も…… 結果としてますむらの絵(模写)より、ぐだぐだ言い訳じみた解説文のほうが面白く(興味深く)、葛飾北斎の絵のオリジナルとしての迫力、凄さをあらためて認識することとなった。



帰宅してから、登場人物をますむらひろしによる猫のキャラクターに置き換えた『銀河鉄道の夜』(1985年、監督:杉井ギサブロー)を見たくなり、久しぶりにビデオで再見した。やっぱり、これは傑作だ。日本(だけでなく世界)のアニメーション映画の極北に位置する稀有な作品だ。なぜ何度見ても同じ場面で泣いてしまうんだろう。

銀河鉄道の夜 [DVD]
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KADOKAWA / 角川書店
2014-05-30
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