Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

武蔵府中再訪

1970年代の中ごろ、東京都下、多摩地域の府中市に住んだ。府中の名は遠く律令時代、大化の改新(645年)の後、ここに武蔵国の国府が置かれたことによる。他の地方の府中(広島県に同名の市がある)と区別する為に「武蔵府中」とも呼ばれるこのまちを、30数年ぶりに訪ねてみた。


京王電鉄京王線の府中駅は高架駅となり、駅周辺は再開発ですっかり様変わりしていた。変わらないのは、甲州街道を横切って南北に延びる全長約500mのケヤキ並木。正式名は「馬場大門のケヤキ並木」といい、ケヤキ並木としては唯一、国の天然記念物に指定されている。


鎌倉時代に植えられたと推定される古木もあるが、枯死したものも目につく。旧甲州街道に面した大国魂神社まで延びている若いケヤキは、私が住んでいたころはなかったので、新たに植栽されたものだろう。


ケヤキ並木が途切れたところに大国魂神社がある。武蔵国の総社で、国内六社の祭神を合祀しているので「六所宮」とも称される。東京で特に格式の高い「東京五社」の一つでもある(他に東京大神宮、靖国神社、日枝神社、明治神宮)。


 府中市立中央図書館(現在は「市立ふるさと府中歴史館」)

神社の本殿に至る長い参道の脇にあるこの図書館を、私は自分の書斎のようによく利用した。読んだのは府中市に在住していた宮本常一の著作を中心に、民俗学関係の本が多かった。


大国魂神社拝殿。私が府中に住むことを決めたのは、馬場大門のケヤキ並木と、大国魂神社があったからだった。夏の季節に行われる祭事「すもも祭り」で、厄除けの烏団扇を買い求めたことも、今では懐かしい思い出だ。


烏団扇  烏団扇


私が借りたアパートは神社のすぐ東側にあった。その場所に行ってみると建物はなく、駐車場になっていた。
アパートの前に質屋があり、そのころの唯一の財産であった8ミリカメラと映写機を何回か出し入れしたのだが、なんと、その質屋が当時の看板そのままに、まだ存続していた!

←1976年(昭和51年)撮影


※toshibon's essay 「武蔵府中の思い出」
http://tabunoki.exblog.jp/9963843/