Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

気まぐれに1曲  タルコフスキー・カルテット


友人から「タルコフスキー・カルテット(Tarkovsky Quartet)を知っている?」とメールが届いた。YouTubeのリンクが貼られていたので見て(聴いて)みる。



Tarkovsky Quartet – Nuit blanche


ピアノ、チェロ、アコーディオン、ソプラノサックスという変則的な編成で、アンドレイ・タルコフスキー(1932-1986)の肖像や映画の1シーンをバックに演奏している。ミニマル・ミュージックにも通ずる単調で静謐な楽曲がある一方で、フリージャズというか、インプロヴィゼーションっぽく展開するものもある。音楽でタルコフスキーへのオマージュを捧げているといった感じ。曲は映画に使われていたものではなくオリジナルだが、それを知らずにサウンドトラックといわれて聴いても違和感がない。


調べてみたら、フランソワ・クチュリエ(François Couturier, )という名の知られたフランスのジャズ・ピアニストによって結成され、これまで3枚のアルバムを出している。2006年ころから活動しているらしいが、ジャズ方面というかECMレーベル関連の音楽は疎いので、全く知らなかった。


友人がリンクを貼っていたなかに、カルテットの演奏にタルコフスキーの長編第一作『僕の村は戦場だった』(1962)のファースト・シーンとラスト・シーンを挿入したものがあったTarkovsky quartet: "Le temps scellé: Tiapa" - YouTube。『僕の村は戦場だった』は第二次大戦中の独ソ戦で両親と妹を殺され、斥候を務める12歳の少年の物語だが、戦場の過酷な現実と対比して甘美な「夢」が描かれる。そこに立ち現われるのは純化した「記憶」と「時間」。若きタルコフスキーのみずみずしく多幸感あふれる悲しみの映像(矛盾しているようだが)に、あらためて胸を打たれた。