Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

Don’t Worry Baby

ブライアン・ウィルソンのソロとしての初来日公演を、有楽町の東京国際ホールで見た(聴いた)のは1999年7月。舞台でのブライアンは完全復帰にはほど遠い状態だったけど、まさかtoshibonが生きているうちに「生ブライアン」にお目にかかれると思ってもみなかったので、それだけで満足だった。


ただ、60年代のビーチ・ボーイズのヒット曲を歌うブライアンの声は、当然ながら、もうあの天駆けると評されたようなファルセットボイスではなかった。公演のために結成されたバンドメンバーが完璧な演奏とコーラスでサポートすればするほど、ビーチ・ボーイズの不在を感じてしまったのは、わかりきったことだけど、さびしかった。弟のデニスとカール、そしてマイク・ラブにアル・ジャーディン、彼らの声が一体となった時のあの唯一無二のハーモニー。ああ、ぼくはやっぱり、総体としてのビーチボーイズ、5人(ブルース・ジョンストンも入れると6人ね)のビーチ・ボーイズが好きだったんだな、とコンサートが終わってから気づいたのだった。 


ところが…あの来日公演から13年、なんと結成50周年を期して今は亡きデニス、カールを除くオリジナルメンバーが結集してビーチ・ボーイズが再結成され、ワールドツアーを開始、先週にはついに日本公演を行ったのだ!! 来日公演することを知ったのは、つい1カ月前。おまけに、先月から仕事がたてこんで身動きとれず、これが最後?のビッグイベントに馳せ参じることができなかった「駄目な僕」(泣)。


オリジナルアルバムとしては20年ぶりの新作「ゴッド・メイド・ザ・ラジオ」を聴いたり、来日に合わせて発売の2冊のビーチボーイズ関連本をめくったりしながら、50周年を祝って「ひとりビーチ・ボーイズ祭り」をして自分を慰めております…。


というわけで、今月の「気まぐれに1曲」は、ビーチ・ボーイズが1964年にリリースした「ドント・ウォリー・ベイビー(Don’t Worry Baby)」を。全米NO.1になった「アイ・ゲット・アラウンド(I Get Around)」とカップリングで発売されて、両面ヒットとなった曲。それにしても、この2曲がシングル両面だなんて強力すぐる! 


ブライアンのファルセットボイスって、明るい歌をうたっていても切なく聞こえるんだよね。映像も60年代前半の、若かりしビーチ・ボーイたち。遠い時代のおとぎの国のような、まるで束の間の夢だったかのような、永遠に夏が続くかのようなモラトリアムでイノセントな世界。『ペット・サウンズ』以降の「神のみぞ知る」、「サーフズ・アップ」も名曲だけど、このころの曲がビーチ・ボーイズで一番好きかもしれない。


来日公演の日本版プログラムに細野晴臣が次のようなコメントを寄せていて、それが素晴らしい。ビーチ・ボーイズが何たるかを言い得ている。


「アメリカは明るいだけでなかった、ポップスが楽しいだけでなかった…美しい旋律に陰影を感じさせるビーチ・ボーイズがそう教えてくれたのだ。
そして色々なことが起こったが、今となってやはりポップスは楽しいのだと思わせてくれる。そんなバンドはビーチ・ボーイズ以外に存在しない」