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髪結いの亭主 物書きの妻

東京日記 「紫陽花日記⑤」 オルセー美術館展

姜尚中(カンサンジュン)氏といえば、昨年からNHK教育TV「日曜美術館」の司会をつとめている。その「日曜美術館」で、妻の手術で東京に赴く前、「夢のオルセー美術館 傑作10選」と題し、いま国立新美術館で開催されている「オルセー美術館展2010―ポスト印象派」の特集をした。それを見て、是非ともこの展覧会を観覧するつもりでいたので、姜氏に出会ったことがことのほか印象に残ったというわけである。


だが、ここで正直に申せば、私はなぜあの番組に姜氏が起用されているのか、その理由がよくわからない。そりゃ、人の好みは千差万別、それぞれだ。(よく聞くとあまりたいしたことは言っていない)ソフトな語り口とものごしに心ときめかせる人がいたって文句はいえない。反対に前任の壇ふみがよかったという人や、私の友人のようにその前のはなさんに”萌え”という人もいる。私はといえば、メイン司会はニュートラルなNHKのアナウンサー、それも斉藤季夫さん(だいぶ前に真野響子と組んでいた)や石澤典夫さんのような男性アナウンサーがふさわしいと思っていたりする。


ところで、「オルセー美術館展」である。
チラシに「モネ、ゴッホ、セザンヌ、ゴーギャン、ルソー、傑作絵画115点、空前絶後」とあるように、まあ、なんというか量、質ともに予想以上に素晴らしく、圧倒されてしまった。
 
展覧会の構成は、次のように10章に分けられている。第1章「1886年―最後の印象派」、第2章 「スーラと新印象派」、第3章「セザンヌとセザンヌ主義」、第4章「トゥールーズ=ロートレック」、第5章「ゴッホとゴーギャン」、第6章「ポン=タヴェン派」、第7章「ナビ派」、第8章「内面への眼差し」、第9章「アンリ・ルソー」、第10章「装飾の勝利」。
 
1章「1886年―最期の印象派」のモネの「日傘の女性」で、もう釘づけになる。10年前の1876年に制作した有名な「散歩、日傘をさす女性」と類似した構図だが、こちらは人物の輪郭がもっとあいまいというか、顔の判別もほとんどつかなくなっていて、すべてが光に溶け込んでいるように見える。モネの絵は、「さすらいのカウボーイ」(1971、ピーター・フォンダ)や「ギャンブラー」(1971、ロバート・アルトマン)など繊細な光の映像表現に徹底してこだわった一部のアメリカン・ニューシネマにも影響を与えたのでは、とふと思った。


圧巻はゴッホ7点、ゴーギャン9点が同じフロアに相対して展示されている第5章「ゴッホとゴーギャン」。これだけのゴッホの絵に直に接すると、これまで見てきた他の画家の絵と何かが違うと直感する。うまくことばで言い表せないが、時を経ても絵具に悲痛な狂気が宿っていて、絵がふるえているように思えるのだ。よく知られた「アルルのゴッホの寝室」、そしてやっぱり「星降る夜」が印象に残った。


ほかにも私のつたない感想など書き連ねる必要がない傑作名作ぞろいなので、まだ観ていない方は、足を運んでも損はないと思う。美術にそれほど関心のない人でも充分楽しめるはず。が、すでに入場者数が40万人を超えたそうで、これから夏休みに入るとますます混雑はひどくなるだろうから、土・日は避けたほうが無難だ。(続く)


国立新美術館の内部。1階フロアはカフェ、中央の逆円錐形の上部(3階)はレストランになっている。ここを訪れたのは、開館した3年前の春、「異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900 - 2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」を見て以来。



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