Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

東鳴子温泉でミニ湯治

20年くらい前、漠然と「物書き稼業」で暮らして行けたらいいな、などと思っていた。それがなんと、気が付いたら文章を書くことで飯を食べるようになって15年近く経ってしまった。願いが叶ったはずなのだが、この稼業、思っていたよりラクではなかった。なぜなら未だに文章を書くという行為に馴れない。いつまでたっても文章を書くために七転八倒しているのだ。まあ、簡単にいえば才能がない、ということに尽きるのだろうが…。


この世界で仕事をする上で避けて通れないものに、〆切というものがある。そのプレッシャーに耐えるだけの精神力と体力が近ごろとみに衰えてきたことも、私を憂鬱にさせる。〆切ギリギリで集中力を高めて2日くらい徹夜して何とか仕上げるなんてことはザラだったが、しかし、もう無理がきかない。それにそんないい加減な仕事ぶりはこの業界では通用しなくなっている。身体もあちこちガタがきている。前立腺肥大に胃腸病、最近は五十肩にもなった。


今さら貧乏から抜け出せるとは思わないが、せめてもう少しココロに余裕を持って楽に暮らせないものか。できることとできないこと。やるべきこととやらなくてもよいこと。残された時間がそんなにあるわけじゃないのだから。少しずつ生活を変えていかなければ。
…と、ついBlogにグチを書いてしまうほど、ここんところ仕事の〆切が重なって睡眠不足&不眠症になり、絶不調に陥ってしまった。それで、気分転換のため思い切って宮城県の東鳴子温泉に行ってきた。


泊まったのは「まるみや旅館」.ここは食事の提供はしておらず、自炊専門。日帰り入浴も受け付けていない。部外者が館内に入ることはないから部屋にカギはついておらず、どの部屋もドアを開けっ放しで、実にのんびりとした昔ながらの湯治宿。ご主人は東北の湯治場を紹介した拙著を読んで感激したと、うれしいことをおっしゃる。ご自身も湯治場が大好きで、年に2回は家族そろって各地の湯治場めぐりをしているということで、本に載せた宿はほとんど泊まっていた。


2日目にはそのご主人の取り計らいで、鳴子町観光協会で立ち上げた温泉療養部会に出席し、東鳴子、川渡、中山平など鳴子温泉郷の湯治宿における「温泉療養プラン」「現代湯治」の取り組みを聞くことができた。「まるみや旅館」はもちろん、東鳴子温泉の「勘七湯」、川渡温泉の「高東旅館」のご主人の湯治文化の再生にかける熱い想いに心を打たれた。鳴子温泉郷(特に東鳴子温泉)は今、日本の温泉地の中で一番湯治に力を入れ、各宿の経営者が頑張っている温泉場だ。


たった2泊3日のミニ湯治だったけど不思議と体調が戻り、眠れるようになった。