Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

70年代の輝き-ディック・リチャーズ


好きな野球映画のことを考えていたら、『さらば愛しき女よ(FAREWELL MY LOVELY)』(監督:ディック・リチャーズ、1975)を思い出した。原作はレイモンド・チャンドラーの同名小説で、舞台は1941年のロサンゼルス。まったく野球映画などではないのだが、ロバート・ミッチャム扮するフィリップ・マーロウが、ラジオの野球ニュースを聞きながら、ジョー・ディマジオの連続試合安打の記録がどこまで伸ばせるかということをやたら気にしているという場面が、今でも印象に残っている。


ニューヨーク・ヤンキースのジョー・ディマジオが1941年にうち立てた56試合連続安打は、今後も破ることは困難といわれるメジャー・リーグの大記録だが、その記録達成(というより連続安打ストップ)のエピソードが1941年のロサンゼルスを舞台にした気怠くちょっとセンチメンタルな物語の時代色を、うまく醸す効果を発揮していた。
確か連続ヒットが56試合で途絶えたのをラジオで聞くシーンがラストだったと思う(30年近く前に見た映画なので記憶違いかもしれない。それと、チャンドラーの原作にディマジオのエピソードがあるのかどうかも、原作を読んでいないのでわからない)。


監督のディック・リチャーズは、前作のデビュー作『男の出発(たびだち)』(1972)が素晴らしい出来で、『さらば愛しき女よ』に続いて公開された『ブルージーンズ・ジャーニー』(1975)もロード・ムーヴィーの佳作だった。私の知る限り4作目の『愛の7日間』(未見、1983)以降、日本で公開された映画はなく(1976年製作の『外人部隊フォスター少佐の栄光』は劇場未公開だったが、現在DVDで発売されているらしい)、その後の活動はまったく知らない。まさに70年代に彗星のような光を放って消えた映画監督だった。


元々著名な写真家だったという経歴から、光のとらえ方が上手く、陰影のある絵画的な映像美に魅力があった。特に『男の出発(原題はTHE CULPEPPER CATTLE CO.)』は、カウボーイと牛の輸送(キャトル・ドライヴ)という西部劇でおなじみの物語を逆光を多用した映像と誇張のないストーリー展開で写実的にとらえた傑作で、私は『さすらいのカウボーイ』(監督:ピーター・フォンダ、1971)、『ギャンブラー』(監督:ロバート・アルトマン、1971)と共に70年代初めの“たそがれウエスタン3部作”と勝手に名付け、偏愛している。

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