Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

続・東京日記 夜の勝鬨橋

勝どき界隈でひとりで落ち着いて飲めるところを探すのは難しい。なので、近場で歩いて帰れる築地をたまにうろうろしたりする。飲んだ後は夜の勝鬨橋を渡る。


橋は1940年(昭和15年)の完成。全長246メートルのうち、中央部の約50メートルがハの字に開く可動橋で、大型船舶が航行できた。が、1970年(昭和45年)を最後に、開閉をやめている。もちろん、私は跳ね上がった勝鬨橋を実際に見たことはない。


途中、隅田川を行く屋形船の航跡を追ったり、川面に映る佃の高層マンションの灯りを眺めたり。川風にあたりながら、長い橋をゆっくり渡る。これが気持ちよくて酔い醒ましになる。


この武骨で重厚な感じがいい。同じく隅田川に架かる清洲橋、永代橋とともに国の重要文化財に指定されている。


アーチ橋から足元の繋ぎ部分を越えて中央部の可動橋(開閉部)へ。歩道の上にある窓のついた建物内には、開閉を操作する運転室や見張室などが設けられているという。手前にあるのは、橋が開く際に往来を停止させた信号機?


夜間は21時ころまでライトアップが行われている。アーチ部分がグリーン、水平部はブルー。橋の構造を強調しているようで、結構気に入っている。


勝どき側の橋のたもとにあるデニーズ(矢印)を時々利用する。店内で一番眺めのよい奥のエリアが喫煙席なのが不満だったが、昨年全席禁煙となった。窓側の席に座ると勝鬨橋と隅田川がよく見える。


ライトアップが終わって夜遅くなっても、銀座方面から晴海通りを歩いて帰宅するのだろうか、橋を渡る人が途絶えない。


橋の下流側を渡る時は東京タワーがすっきりくっきり見えたのだが、1年ちょっと前に手前にビルが建ったため、タワーの頭の部分しか見えなくなったのが悲しい。

2016年12月撮影

2019年2月撮影


2018年1月に撮影した勝鬨橋下流の隅田川(↓)。移転前の築地市場が光を放ち、東京タワーを隠してしまったビルがまだ工事中(矢印)。左隅のアーチ橋は2018年(平成30年)11月に開通した築地大橋。この橋ができるまでは、勝鬨橋が隅田川で最も下流に位置する橋梁だった。


そういえば、勝鬨橋から始まり勝鬨橋で終わる映画があった。川島雄三の「洲崎パラダイス赤信号」(1956年)。勝鬨橋の上で、男(三橋達也)と女(新珠三千代)が「これからどこへ行こうか」と途方にくれているところから始まり、ラストもまた橋の上でこの2人がたたずむ(DVDのパッケージが勝鬨橋のシーン↓)。映画では路面電車(都電)が橋の上を走っていた。

洲崎パラダイス 赤信号 [DVD]
洲崎パラダイス 赤信号 [DVD]
日活
2006-03-10
DVD

小津安二郎の『風の中の牝雞』(1948年)でも、勝鬨橋が背景となるシーンがあった。
戦後間もない荒涼とした隅田川の風景が、いわゆる小津調とは異質なこの映画に昏い翳りを醸していた。