Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

きまぐれに1曲⑦ 夏草の誘い

今日で8月も終わり。
毎年、晩夏に聴きたくなるのが、ジョニ・ミッチェルの『夏草の誘い The Hissing Of Summer Lawns』(1975年)というアルバム。
見開きのジャケットを開くと、夏の陽光を浴びてプールの水面に浮かぶジョニ・ミッチェルの大柄な身体が表題曲の「The Hissing Of Summer Lawns 」を奏でているようだ。どの曲もカラフルでキレていていいけれど、A面最後の「Shades Of Scarlet Conquering」が(詩の内容は夏とは全く関係ないけど)夏の終わりを告げるような余韻が残るバラードで、今の季節に聴くと昔のことが思い出されてなんだか切なくなる。



Joni Mitchell - Shades Of Scarlet Conquering


このころのジョニは、それまでのフォーク/ロック路線からジャズ路線というか、クロスオーバーな音楽に転換した時期で、次のアルバム「逃避行 Hejira」でそれがより深化(進化)したものとなる。初期のころの『Blue』やポップな『Court and Spark』もいいけど、緊張感と哀切が伴ったこの2作がジョニ・ミッチェルのアルバムでは一番好きだ。先鋭的な音楽性からいっても、今聞いても色褪せていない傑作だと思う。


もう10年近く前だったか、L.A.タイムズに掲載されたインタビューの中で、ジョニはボブ・ディランのことを「盗作野郎」、「いんちきでまがいもの」と発言して波紋を広げたことがあった。彼女はディラン(の曲)を好きだと公言していたはずだし、一緒にツアーをしたこともあったから話半分に聞くとしても、私はこの発言を結構的を射ているのでは、と共感したのだった(でも、ほとんどの人はジョニに批判的だったようだ)。
まぁ、御大ディランに対してこんなことを言えるのは、ジョニ・ミッチェルくらいなもので、彼女がポピュラー音楽全般に果たした功績は前人未到のものとしていくら讃えても讃えたりない。
モルジェロンズ病という難病を患っているらしく、3年ほど前には一時危篤状態になったというが、今はどうなんだろうか。ディランがノーベル文学賞をもらえるんだったら、ジョニだってその資格があるんじゃないの? 元恋人の故レナード・コーエンもネ…。こんなこと言ってたらキリがないけど。

夏草の誘い
夏草の誘い
ワーナーミュージック・ジャパン
2015-08-05
ミュージック

今思い出したけど、このアルバムは最初買ったのではなく、図書館から借りて聴いたのだった。
1976年の夏、そのころ住んでいた千葉県松戸市の市立図書館のレコード貸出コーナーで見つけて、図書館近くの江戸川べりの土手をレコードを抱えて歩いたんだった。