Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

伊豆沼の渡り鳥

先日の東鳴子温泉ミニ湯治の帰途、伊豆沼に立ち寄ってみた。
伊豆沼、それに隣り合う内沼は、冬鳥の飛来地として国際的に重要であるため、北海道の釧路湿原に次いで日本で2番目にラムサール条約の登録湿地に指定されたところ。宮城県のみならず、国内のバード・ウォッチャーの聖域(サンクチュアリ)のような場所なので、前から一度行ってみたいと思っていた。


冬になると伊豆沼・内沼に飛来するのは、夏の繁殖地(シベリア・北極圏)と越冬地(伊豆沼・内沼)を往復しているハクチョウ、ガン、カモ類。それら渡り鳥のおびただしい数に圧倒された。同行した私の連れは鳥がニガ手なので車から降りなかったほど。


私がバード・ウォッチングに目覚めたのは高清水岡のふもとに住んでいた時だった。ようやく風の冷たさがやわらいだ春先の暖かい日、散歩コースだった高清水岡へ登る雑木林の中で、頭上を野鳥がさかんにさえずりながら飛び交うのを見ていたら、なぜか突然鳥の名前を知りたくなり、すぐに双眼鏡を買い求めた。以来、散歩に出かける時は必ず双眼鏡を携帯するようになった。


バード・ウォッチングのビギナーは誰でもそうだと思うのだが、そこが野鳥たちの棲息場所だと知った時から、全く気にもとめていなかった森や水辺が今までと違ったものに見えてきて、野鳥図鑑が手放せなくなる。


自宅からほど近い磯辺の浅瀬でじっと動かないアオサギをよく見かける。近くに彼らのコロニーがあるといわれているから、昔から普通に見られたはずなのだが、バード・ウォッチングに目覚める前はあまり目にした記憶がない。興味がないからそこに存在していても、視界にはいらなかったのだ。(まあ、野鳥にかぎらず、私たちが見ているもの、世界の成り立ちそのものが、個々人の主観的な思い込みが生みだした幻影にすぎないともいえる…)
地球上に人類が棲息していようがいまいが、バード・ウォッチャーなどいようがいまいが、アオサギは今日も鵜ノ崎の岩礁にひっそりたたずみ、渡り鳥たちは時を定め国境を越えて移動するのだから。


「ステイションからステイションへ(Station To Station)、コーストからコーストへ(Coast To Coast)記憶素子は伝達する。われわれはメディアそのものなのだ」(By Fuqusuke)
このことばは、われわれ人類よりも、鳥類にこそふさわしい文言ではないだろうか。
 
伊豆沼(宮城県栗原市・登米市)