Toshibon's Blog Returns

髪結いの亭主 物書きの妻

石ころ屋

残暑が厳しかった今年の夏の終わり、山陰ジオパークの視察旅行の帰りに富山に立ち寄った。宿泊したホテルの近くにある「丸一」という居酒屋に行く途中、「石ころ屋」という看板のお店があった。石ころを売る店…といって、すぐに連想したのは、つげ義春の『無能の人』シリーズ第一作目の「石を売る」。多摩川の河原から石を拾ってきて、川べりの掘っ立て小屋でその石を売る男の話。商品は何の変哲もないそこらにころがっている石。売るといってもただ並べているだけ…。


そういえば、いつの間にか私も石ころを集めていたのだった。
自宅の居間や庭に男鹿の浜から拾ってきた石が無造作に置かれている。一応、私の美的感覚と岩石の価値を鑑みて拾い集めたものだが、興味ない人からみれば、ただの石ころだ…が、つげマンガの主人公のように、この石を路上に並べて買ってくれる人を日がな一日待っている…「丸一」で酒を飲みながら、そんな自分の姿をふと思い描いてしまった。


ところで、「石ころ屋」だが、前を通った時は夜だったので、何の店かよくわからなかった。まさかつげマンガばりに石ころを売る店でもあるまいと、(それでも半ば期待して)帰ってからネットで調べてみたら、私には興味のない天然石の「パワーストーン」を売る店だった。


「丸一」は私好みの気のおけない居酒屋。店のテレビは、ちょうどこの日から始まった越中八尾の「おわら風の盆」の中継を流していた。