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髪結いの亭主 物書きの妻

真冬の加茂水族館

山形県庄内にある鶴岡市立加茂水族館に行ってきた。地域資源の活性に参考となる庄内地方の視察というのが名目で、道の駅、海鮮市場、物産館、産直などをまわる総勢6名の日帰り旅行。真冬の季節ということもあり、屋内施設ばかりなのは仕方がない。


この水族館の歴史を調べると、その軌跡(奇跡?)が波乱万丈というか、ほんとに面白い。誕生したのは1930年(昭和5年)というから、90年に及ぶ結構な歴史を有する。戦中は他施設に転用され、復活後も経営が目まぐるしく変わり、業績が低迷して負債を抱えるなど紆余曲折があった。年間入場者数のグラフを見ると、高度経済成長後期の1967年(昭和42年)に年間21万人に達しているが、これ以降は凋落の一途となる。経営危機に何度かあいながら、とうとう1997年には年間9万2千人まで落ち込んでしまう。だが、この年に始まったクラゲ展示が次第に評判となり、民間から市へ経営母体が変わった2002年以降は、クラゲに特化した水族館として再生を遂げる。さらに2014年に新施設のクラゲドリーム館(愛称)を開館したところ、1年間で入館者数が83万を超えるという大盛況に。その後も年間55万~70万人で推移して、今や庄内地方だけでなく、山形県有数の広域集客の観光地となった。

     

この小さな水族館に再生の物語がある         約2000のミズクラゲが浮遊する
(あらたに開館した2014年に撮影)           クラゲドリームシアター


 私はクラゲ特化以前の80年代と90年代、業績が低迷しているころにそれぞれ1度ずつ訪れているが、なんだか館内が暗く、特徴のない水族館だなあ、という印象しかない。90年代のはじめころには、すぐ近くの善寶寺の池にいる人面魚が話題になっていて、それに便乗してなんと人面魚を展示していた。人面魚といっても、ただの鯉(コイ)である。苦笑したのを覚えている。新館になってからは今回も含めて3度も訪れている。といっても、別にクラゲが好きだからというわけではない。1度目は湯の浜温泉に仕事がらみで立ち寄ったついでに、2度目は妻と義姉を案内して、そして3度目が今回の視察。


連休や夏休みなどはこの小さな水族館に入りきれないほどの人が訪れ、クラゲをゆっくり鑑賞できない混雑を呈するのだけど、さすが真冬の平日に訪れる人は少なく、ほぼ貸切状態だった。同行した人たちは客の来ない冬が狙い目だね、と言っていたけど、私には人のいない冬の水族館は物足りないというか、アシカショーもお休みでなんだかつまらなく思えた。子どもたちの歓声が聞こえ、老いも若きも、親子や恋人同士が仲良く手をつなぎながらクラゲを見入っているのが、やっぱりこの水族館らしくていい。


そこであらためて気づいたのだが、私はこうした展示施設-美術館や何かのイベント会場であれ、行楽地であれ、電車やバスなどの乗り物であれ…人を観察しているのが好きなのだった。クラゲよりも人? これも社会学という胡散臭い学問にちょっかいを出したり、一時はヘンテコな考現学にかぶれたせいなのかな。いや、というより単にスケベエなだけかも。